ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第144章 涙と私達
パチリと目が合った私とアキホさんはどちらともなく笑っていた
「ずっとお箸文化しか知りませんでしたから……ね、沙夜子さん」
「………ですね、私もまだまだ慣れないです」
正確には私は日本、アキホさんはジャポンだけれど酷似した環境に生まれ育ったのだと知っているだけで分かち合える事は沢山ある
お揃いの慣れない手つきでラム肉を切りながらクスクスと漏れた声に旦那様方は優しい視線を注ぎ
「沙夜子さん方のお陰でアキホに自信が付いた様で、本当に感謝しています」
ダンさんは私達に微笑みながら口元を緩めた
「そんな!私の方こそ!女の子の友達とか全然いてないし……仲良くなれて……ほんまに楽しかったです!ありがとうございました!」
お礼を言うのは私だ
短い間、ほんの一時でも何の背伸びもせずに話せたのはダンさん夫婦だけだった
「わたしも楽しかったです……本当お別れしたくないくらい」
私の笑顔にしゅんと沈んだアキホさんの表情に胸が切なくなったけれど
「そう暗くならず、楽しみましょう!」
残り少ない時間を目一杯楽しもうと笑顔を送り続けた