ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第144章 涙と私達
04月24日
私達はクリンアイスを旅立ってから回り切れないくらい山程あったアクティビティ施設を見事制覇した
旅行のメインでもあった観光行程は全て終わってしまったけれど彼と一日中一緒に過ごせる贅沢を噛み締めて過ごす日々は瞬く間に過ぎて行き
豪華客船でのハネムーンも残す所あと三日
私達はある人達からのお誘いを受けてレストランのテラス席にて食事をしていた
突然アキホさんが部屋を訪れたのはつい数時間前「是非いらしてください」なんて慎ましく笑ったアキホさんの話では
アキホさん達ご夫婦の新婚旅行は本日で終了らしく、船を降りる前にゆっくりとお食事でも……との事で、所謂お別れ会に誘われたのだ
キラキラと太陽に輝く海原を白波を立てて進む船
暑さと寒さが極端な海域を過ぎて吹く風はすっかり春らしい心地好さに変わっている
そんな中カチャカチャと賑やかに鳴る食器とテーブルに並んだ揃いの料理を囲み私達は和やかな雰囲気で今の時間を楽しんでいた
僅かな会話の隙間に
「アキホ、ナイフはこう持つんだよ」
ダンさんは小さな声でマナーを指摘して、アキホさんは慌てて見よう見まねでナイフを握っていて
十二分に優雅でおしとやかなアキホさんだが慣れない環境で頑張っている姿に私は自身の手元を確認した後にチラリと彼を盗み見た
彼は私のテーブルマナーを指摘した事は無い
一応自分なりに勉強したので間違っている事は無いと思うけれどそれでもアキホさん同様不慣れでぎこちないのは変わり無かった
ジャポンを単身離れたと話していた境遇や同年代という事で私はアキホさんに対し勝手ながら親近感を抱いていて
顔を合わせれば笑顔でお話しをするちょっとしたお友達の様な間柄に気が付く頃には成っていた
他愛ない立ち話だったり、バーで鉢合わせて少し談笑する程度だったけれど、暫く閉鎖的な環境で過ごしていた私にとっては久しく感じる楽しい時間で
異国で新しい人生を始めるアキホさんもまた同じ感情を抱いてくれている様に思う