ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第143章 オーロラ夜空と彼とお話
「……ふへへっ」
「………………。」
彼はそんな私を無表情にじっと見詰めた後、視線を逸らすと生演奏を響かせる舞台上のオーケストラを見遣って
「……あのさ、俺不思議に思っている事があるんだけど」
浮かれに浮かれた私とは対照的に静かな声を落とした
再び交わった視線の間には彼特有の会話の間が流れて
私は先程迄のハッピーな妄想を忘れて只じっと彼の言葉を待つ
「俺は昔からパーティーとか舞踏会とか所謂社交界を鬱陶しいと思ってたんだ。」
単調に、しかし凛とした声を唇から紡いだ彼は私が頷くのを見届けて話しを続けた
「クラシック、身なりだけ飾った人間、全くの興味が無いのに話ついでに飲む酒も全部面倒だったし、きっと仕事じゃ無ければ出向く事なんて一生無いだろうと思ってた」
「………はい」
「……だけど今こうして沙夜子とクラシックを聞いているのは割と悪くない気分なんだよね……よく分からないけれど。」
顔色のひとつも変えず本当に不思議そうに呟いた彼を前に
私は少し泣きそうに成った
彼の言動や家柄から推測するに貴族なのだから当然社交界での付き合いは多分にあるだろう
しかし、家業が家業だけに華やかさの裏に見える貪欲な闇を彼は幼い頃から見て来たのでは無いだろうか
そして暗殺以外の事柄に関心の希薄な彼は社交界が本当に心底面倒だったのだろう
彼の口振りから感じたのは
『社交界が嫌い』と言うダイレクトな感情では無く『仕事だから仕方がないけれど』という妥協にうんざりとした感情だった
…………だけど今は…………