ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第142章 永遠を刻む氷
故人の姿を直接見る事が出来る事も不思議なのだが
彼女や沢山の故人はこれから先、何も変わらない姿のまま何百年、何千年と人々に花を贈られ続けるのだと思えば妙に感慨深く
今目に見える光景の他、その人が生きていた時代に思いを馳せれば私の胸には言葉にするのは難しい何とも言えない感動が広がっていた
彼を真似る様に祭壇の様な場所に花束を手放せば
私達が手向けた紫色の花の他、黄色や青の様々な花で鮮やかに彩られた祭壇に静かに佇む彼女の姿は其所がお墓だと忘れさせ、ある種の芸術作品を見ている様な幻想的な光景に思えた
本当に眠っている様にしか見えない姿だからこそ彼女は今の自分の姿を知ったら何を思うのだろう……なんて考えてしまって
私だったらきっと沢山の人が笑顔で花を贈ってくれたなら嬉しいだろうなぁ……なんて
「綺麗ですね」
墓場とは場違いに出た言葉は素直な感想で
素直にそう言えたのは遺族のお墓参りを済ませたクリンアイスの人々が彼女にも花を沿える姿が笑顔だったからだ
じっとその場を動けぬままに見惚れる私を静かに待っていた彼はそっと睫毛を伏せて
その仕草だけで彼も私と同じ気持ちなのかもしれない、なんて思う
「まだ向こうも見て回れる場所があるよ。」
「え!ほんまですか!」
私達はまた人波に乗って歩き出した
見れば見るほど美しく壮観な場所に足取り軽く辺りを見渡す
所々立てられた看板はまさに観光地と言った感じでそれらを繁々と眺めながらも
「見て。」
「うわぁ……ペットと一緒に……」
時々ペットと思われる動物と一緒に眠る人や
「………この人のペット白熊ですよ………」
「違うよ、猟師が撃った獲物と共にって書いてる。」
様々な思い出と眠る人を目の当たりにして、クリンアイスではもしかしたら死はお別れの概念では無いのかもしれないなんて感動していたのだが……………
「見て、人食いシャチに食べられた人の腕だって。」
「………ひぃっ……!!!!」
流石は異世界
グロテスクな腕だけが永遠を刻む墓を前に私は怯え倒し小さな悲鳴を漏らした