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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第142章 永遠を刻む氷





満員のトロッコに揺られて氷のトンネルを抜けた先


私達は氷山にポッカリ開いた洞窟へ人波に流される様にやって来た



そしてやはり、観光地として訪れた墓場は私に多大な衝撃を与えた



入り口も巨大だったが入ってみればこれでもかと広大な洞窟内には西洋の棺と似た形をした氷がずらりと並んでいたのだ


並んでいると言っても立てられた其れには故人達が永遠に姿を変えぬまま氷の中で眠る姿があった


まるで本当に眠っているみたいな人から座った姿勢の人迄様々で

その前には家族が手向けた花が咲き、中には氷の棺を磨く遺族の姿もある



「観光して良い場所はもっと奥だよ。」


「…………はい」



悲しそうと言うよりも皆楽し気に久々の再会を純粋に喜ぶ様に笑顔で溢れた洞窟はクリンアイスと同じく全てが氷で作られた美しい場所だった


天井を見上げれば長く下がった氷柱がキラキラと輝き


クリンアイスの住民達は途中途中で故人の元へ向かい、気が付けば賑やかな雑踏は随分と静かに成っていた


多分私達と同じ様に観光にやって来た人だけが最奥を目指していて


暫く歩いた私達の目の前に現れたのは本当に遺体なのか見間違う美しい女性の棺の前だった





「クリンアイスには昔王室が存在した時代があってね、其れの最後のプリンセスの墓だよ。」



他の棺とは明らかに違い立派に細工を施された氷の中、長い金髪がウェーブを描き上質なドレスを身に纏った姿は女神様の様だと思った



「300年間氷を安置するなんてこの国じゃなきゃ無理だろうね。」


「………300年…………」




血色も失われず赤みを帯びた頬にピンクの唇

今にも瞼を開きそうな長い睫毛


プリンセスの名に劣らない美貌は氷の中で永遠の時を刻み私の目に映ったのだと思えば不思議な気分になった



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