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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第142章 永遠を刻む氷







正直今すぐにでもこの場を立ち去りたくなった私は即座に飼育員さんに背を向けて



ゼロちゃん達から名残惜しくも最後のスリスリを受けていたのだが




「良かったね、沙夜子。逆ハーレムで。」




真顔でボソリと言った彼に一体私はどんな顔をしていただろう


私とイルミさんは変な所で似ているのかもしれないですね………………とは口が裂けても言えなかった




__________"





11:07



ホテルを後にして町に降りた私はワクワクと弾む胸で辺りを見渡している


クリンアイスの町は昨日とは一変した活気に溢れていたのだ



町を行く人々は皆白い服を身に付けていて青く浮かぶ氷の国は太陽に照らされてキラキラ光る


更に雑貨屋さんからパン屋さんまで皆軒先に露店を開き其所に売られているのは色とりどりの生花だった

全てが氷で作られた町は色彩に乏しく統一された美しさを見せていたのに

小さな赤ちゃんから老夫婦迄皆一様に白い服を着た人々が花束を手に歩き

露店に並んだ多種多様な花々がカラフルに色を咲かせる光景は不思議な美しさを見せ、私の好奇心を刺激した



「イルミさん!!何で皆白い服なんですか?!私達も合わせて白なんですよね?」


明るく弾んだ私の問いに彼はチラリと視線を落とすと



「今日はクリンアイスのお盆にあたる日で、死者を弔うのは白い服と決まっているんだよ。これは観光客にも義務付けられてる。」


単調な声が簡潔な説明をしてくれた



「…………成る程………お盆……………」




改めて見渡して見れば賑やかには違い無いけれど町中の人々が家族揃って花を抱く光景には何処か厳かな雰囲気があり

お祭りとは違った活気であるとわかった


私達が揃って白い服だった理由もそう言えばフロントで見掛けた人々も皆白い服だった理由にも納得する


彼の国でクリスマスが厳かな日の様にクリンアイスでもまた違った形が存在していて

異世界はまだまだ私の知らない文化で溢れている




「今日観光するのはクリンアイスの墓だよ。」



なんて言いながら丸い紫色の花束を2つ購入した彼は私に片方を手渡した



「お墓………を観光するんですか………?」


「この時期だけ開放される立派な観光スポットだからね。」





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