ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第142章 永遠を刻む氷
表情に乏しいその顔は恐ろしい程に整っていて、決して同化しないサラリと流れる艶やかな長髪や印象的な瞳の漆黒が一層くっきりと輪郭を現し
真っ直ぐに見詰められれば呼吸すらもままならず
純白と言う言葉とはまるで似付かない妖しく漂う存在感すらも全てを纏った彼は大型の狼達を従える様に悠々とソファーで脚を組んで私を静かに待っていた
「じゃ、行こうか。」
単調に発された声と共に立ち上がった彼が私の傍に歩み寄る今この瞬間すらもドキドキと脈打つ心臓
「イルミさんって白も似合うんですね……………」
見惚れるままポツリと漏れた私の言葉に
「どうも。」
なんて興味無さ気に呟いた彼は素っ気ない素振りとは裏腹に優しく私の手を引いて
開いた扉から吹いた冷たい風が二人揃いの白いコートの裾を靡かせた
「忘れ物は無いね?」
「………はい!」
キンと肌を冷やす外気に赤く染まった頬が心地好く撫でられて部屋を振り返る
ドキドキと高鳴る胸は隣にいる素敵な彼の存在と今日を楽しむ気持ちに溢れているけれど
灯りの消えた部屋の扉がパタンと閉じれば、途端に楽しかった旅がまた一歩終わりに近付く気配にどうしようも無く切なくなった
「…………今日でお別れですね、クリンアイス……」
ポツリと漏れた小さな声
「だけどまだ観光が残ってる。」
彼は真っ直ぐに前を見据えたまま言った
……………そうだ、まだ楽しい観光が残っている
感慨に浸るにはまだ早いではないか…………
船に帰ったってまだまだ旅行の途中だし
楽しまなければ今が勿体無い!
彼の一言に一瞬にして気分を持ち直した私は単細胞だが切なさに溺れるよりはずっと良いと思う
全力で今を楽しむ為に一歩を踏み出した私は笑顔で彼を見上げた先
「…………………っ~~カッコいい……………」
彼の不意打ちの流し目に射抜かれて危うく心臓発作で死にそうになったのだった
「短時間で色々な感情に振り回され過ぎでしょ……疲れない?」
「……………っ……………写真!!!写真撮りましょう!!!今は今しかありませんからね、楽しみましょう!!!!」
「…………………。」