ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第141章 小さな伝説と溶ける幸せ
少し開いた唇や僅かに細められる瞳から妖艶な色香を漂わせるのはあの時と変わらないのに
あの時食べたかき氷と同じ様に真っ白な村にいるなんて夢みたいで
「何?」
「………いえ、ちょっと昔を思い出してました」
「ふーん。」
「イルミさん」
「ん」
「人混みで手を繋ぐ約束は有効ですか?」
ホットワインを傾けながら私を見詰めていた彼は僅かに眉を反応させると淡々と声を漏らした
「随分懐かしい話を持ち出すね。」
「今その時の事思い出してまして」
「………あっちは真夏でこっちは真冬だよ。」
「ですね!」
「………あの頃は色々と建前が必要だったからね。もうあの約束は無効だよ。」
「……無効ですか」
ホットワインを飲み干した彼はふぅと息を吐き出すと
「別に今は理由なんて必要無いでしょ。」
単調に言いながら再び手を繋ぐものだからドキドキと騒ぐ心臓とノスタルジックな感慨に私は俯く事しか出来なかった
「ほら、行くよ」
あの頃私達に必要だった約束は彼の漏らした白い跡と共に空に甘く溶けた