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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第141章 小さな伝説と溶ける幸せ







その後メイン通り迄空気に成ったつもりで無言を貫いていた私だが人々の活気に溢れたマーケットに気分は楽しい方へガラリと変わる


寒い色をした空の下、カラフルに張られたテントの数々に陽気に響く音楽

まるで北欧の下町を思わせる通りは異国情緒に溢れていた


楽しい雑踏に混ざってホットワインやハンドメイドのアクセサリーなんていうワクワクの品揃えが呼び込みをしている

何から見て回ろうかと彼を見上げてみれば

チラリと交わった視線と共に指先を絡め取られてドキドキと胸が騒いだ


彼はすぐに素知らぬ顔で露店を見渡してしまったけれど

私は温かな体温が伝わる大きな手をぎゅっと握り返した



「ホットワイン……飲む?」


「………はい」



人波を潜り抜けて私の手を引く彼の背中を見詰めて私は遠い夏の日を思い出していた



彼が突然「人が多い場所では必ず手を繋ごう」と言い出したのは私の住む街で繁華街に出向いた時だった

嫌になる程の人とコンクリートの照り返しが暑い日で


私は珍しくナンパされてしまい

彼はその男性に静かな怒りを露にした

そして言ったのだ「必ず手を繋ごう」と



あの頃の彼は慣れぬ土地に様子を伺いながら私に手を引かれていたけれど

寒い異世界の国で今の私は彼に手を引かれている


彼はあの日を覚えているだろうか



紙コップに注がれたホットワインを私に手渡した彼はお揃いの湯気を上げるワインに唇を付けた




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