• テキストサイズ

ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第141章 小さな伝説と溶ける幸せ







美しい景色を前にのたのた進むもどかしさと寒さに歯を食い縛りながらも

そんな私にチラリと視線を流しながら事も無さげに前進する彼を見てゾッとした


彼の脚力を前にすれば積もった雪も無に等しいのだろう……

そう思わせる程大量の雪を蹴散らしながら進む彼は実にスピーディーで

足元に自動雪掻きマシーンでも装着しているのかと見間違う程に常人離れした身のこなしだ……


ガイドさんは勿論、狼達が怯えていないだろうか………なんて足元以外に気を取られていた一時




深い雪の底で何かにつまずき傾く身体


冷たい風を浴び続けただでさえ寒いのに更に私は雪にダイブするのだと思えば自分自身げんなりする


引力に逆らえぬまま無力に近付く雪面に最早抵抗する気も無く身を委ねていると


想像とは違う温かな衝撃


頭上に降った単調な声



「絶対やると思った。」



そっと見上げれば遥か遠くにいた筈の彼はその胸に私を抱き止めて真っ直ぐに此方を見ていた



「………あ、ありがとうございます……」


「……別に……それより俺の後ろ歩くと良いよ、また転びそうだし」



本当に助かったと思うし逞しさにキュンとする、感謝の気持ちに間違い無いけれど

チラリとガイドさんを盗み見れば平静を装い切れていない驚愕の表情に場違いな汗が吹き出した


………………彼は一体どんなスピードで私を救ってくれたのだろう…………


彼の背中を眺めながら歩く道は綺麗に除雪された様に歩き易く

想像してみてもゾッとするばかりで私は暫く彼の事を優しいイケメン除雪車と思う事で何とか平静を保った



「イルミさん……どうやって歩いてるんですか……?」


「あぁこれ?ちょっとしたコツ。沙夜子には出来ないだろうけど。」


「……あはは……出来なくて良いかな……」





/ 1349ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp