ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第140章 国の歴史と駆ける狼
彼なら難なく蹴割りそうだし本当にやりかねない………っ
今湖を割られてしまえば私やガイドさん、狼もろともキンキンに冷えた水に落ちて溺死する………っ
私はまぁまぁ本気で焦っているのだが彼という人を知らないガイドさんは明るい声色でカメラを向けた
「さぁ、記念撮影を致しましょう!」
そう言えば此方の世界にやって来てこういった観光で写真を撮って貰ったのは水族館のお食事タイムくらいのもの……
あれは誰が誰だか全くわからなかったけれど二人の姿が記念として残るのが嬉しくて言われるままに彼に並び立ったのだが
「そっちじゃなくてスマホで撮影してくれない?写真を買い取る額と同額を払う。」
カメラを向けるガイドさんの前に何故か背中を押されて一歩踏み出した私
どうやら私のスマホを渡せと言っているらしい
理由は特に聞かなくてもわかっていて
彼の写真には一億もの賞金が掛けられている事からホテル側に痕跡を残すべきでは無いと思ったのだろう
少し困惑した様な素振りを見せたガイドさんだったが私のスマホをニッコリ受け取ると素敵な写真を撮ってくれて
スマホ画面には彼と私、そして狼達と美しい滝の景色が残り、誰かに写真を撮ってもらう事の無かった私達にとって貴重な一枚と成った
「イルミさん!綺麗に撮れてますよ!」
笑顔でスマホ画面を見せた私に彼は
「ふーん。」
なんて間延びした声を漏らしただけだったけど、その声色は穏やかなものだった