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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第139章 温泉の湖とタイミング







いや、ピュアで清いという点については変わり無い、と無意味に主張しながらも

そのベクトルは数秒前とは全くの別物だ


途端にバクバクと跳ねる心臓は彼への恋心に燃え上がる


………もしかしたらこんな私でも今このシチュエーションなら自らキッス出来るかもしれない………


美しいロマンチックな光景で抱き合うハネムーンカップル………寧ろキッスするべきタイミングは今…………



無意識に脳裏に浮かんだ林先生の「今でしょ」に勝手に背中を押され、緊張しながらも顔を上げれば



サラリと頬を擽る艶やかな黒髪


彼は印象的な瞳で私を見下ろしながら涼しい顔で


「ん?」


まるでどうしたの、と様子を伺う様に小さな声を漏らした




たったそれだけの所作で爆発しそうにうるさい心音


キスなんてやっぱり私には………でも………だって………なんて心音に負けず劣らず騒がしい頭の中



こういう事は勢いが大切だと自分を奮い立たせながらも緊張から震える手をそっと伸ばしたその時





部屋に響いたノックの音





「ディナーが到着したみたいだね。」





彼は普段と変わらぬ単調な呟きをポツリと残して呆気なくドアへ向かってしまった


黒髪が揺れる背中を見詰めたまま立ち尽くし



「………はは、ご飯かぁ……」


乾いた独り言が落ちる








…………………………………………………………………………………………………………………………………………くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお……………………ッ!!!!!!!




内心恥ずかしいやら悔しいやらで忙しなく本当はその場で暴れ回りたい気分だったがそんな奇行に走れる筈もなく………


その後、カートを押したホテルマンがテーブルに並べる豪快なディナーを只抜け殻の様に見詰めていた







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