ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第137章 食べ歩く二人
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私達は広い砂漠で唯一の果樹園へとやって来ていた
オアシスの麓、故に潤滑に水を確保出来る事から砂漠という環境下でも果物が育つという事で
広い砂漠の中でもムーシャでは普段お目にかかれないフルーツが高値ながら名物と成っているらしい
高い砂丘を砂まみれに成りながら越えた私達
サラサラと乾燥した砂は払えば簡単に落ちて行くのだが問題は汗だった
街中なら日陰が多数存在し、乾いた風が心地好く然程気候を気に止めずにいられたが
ボリュームMAXの太陽に容赦無く照らされれば大量の汗が落ちる
ぜぇはぁと日頃の怠けた日常を彷彿させる様に肩で息をする私の隣で汗のひとつも流していない彼は爽やかにすら見えた
普段の彼に爽やかなんて印象は抱いた事が無かったけれど
シンプルなTシャツにジーンズとラフな格好の彼は砂漠の風に黒髪を靡かせながら実に涼やかで
そんな彼に手を引かれながら懸命に歩いた私は果樹園を見付けた時オアシスを発見したキャラバンの様な気分だった
「ついたぁ……………暑い………」
「うん。」
なんて否定しない辺り彼も暑さは感じているのだろう
異国的な薄いベールが迎える入り口に吸い込まれる様に足を踏み入れればまるで別世界が待っていた
入園手続きを済ませてくれた彼にお礼を伝えながらもワクワクと騒ぐ胸
果樹園の広大な敷地全てを包む様にピンク色の透けたベールがテントの役割を果たし
地面はそのまま砂丘の赤茶けた土と変わり無いのに張り巡らされた水路を涼やかに流れる水音や
ベールから透ける柔らかな日差しが明るく神秘的な空間を作っていた
砂漠にあるのが不思議なくらいに生き生きと覆い繁った緑
そして瑞々しい果実がそこかしこから覗いていて
乾燥した土地故にその異質さはまるで楽園を思わせた
手を触れる事は禁止されているが好きに見て回って良いという事で所々立っている説明なんかを読みながらも果樹を眺める
フルーツを眺めて何が楽しいんだと思われそうだが
多種多様でカラフルな色合い
更に可愛らしい花からは甘く香りが漂っていて目にも鮮やかな空間は見ているだけで心が奪われるものだったのだ