ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第134章 アラビアンナイトに甘い予感
いつの間にか至近距離に立った彼は無慈悲にも私のスマホを取り上げてしまった
「あー!!まだ駄目です!!イルミ様ッ!哀れな民にご慈悲を!!」
なんてすがる私を可憐にスルーして無情にソファーへと投げられるスマホ
まだまだ撮り足りない………
寧ろ生きる芸術である彼を前に終わりなんて無い………
じっとり彼を見上げれば細められた瞳が私を見下しうんざりとした声で
「馬鹿には十分付き合っただろ。………それより沙夜子が好きそうなのがいるよ。」
謎の発言をした
「?」
…………私の好きそうなの…………?
彼の言葉にキョロキョロと部屋を見渡していると不意に手渡された双眼鏡
そして
「あっちの方角に砂漠狼がいる。」
ホテルの裏手に広がる砂漠を指差した彼は単調ながら確かに私の好きそうなものの名を口にした
「え!どこですか!!」
途端に形振り構わず双眼鏡を当てがう私はさぞ扱いやすいだろうけど今は狼を探す
「もう少し下。」
なんて指示をする彼の言葉に忠実に動いていると目一杯に映った狼の姿に一気にテンションが上がる
「あ、あー!!ほんまや!!可愛いー!!!!」
ふわふわの毛並みに大きな足、そしてワイルドな眼差し
「可愛いですね!!」
「うん。」
双眼鏡無しで見えている辺り彼はやはり普通では無いが私は日が落ちて視界が悪くなる迄夢中で狼を見ていて
「沙夜子、ディナーの準備が整った。」
「あ、はい!」
双眼鏡を取り払う迄全く気が付かなかったのだが
「………………え…………凄い………」
なんて間抜けな声が漏れる光景が目の前に広がっていた