• テキストサイズ

ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第133章 臆病な彼女を見詰める彼







じっと見詰め合う数秒を妙に長く感じながらも私が何か言うより先に彼は大きな溜息を付いた



「ま、ガラクタの事はどうでも良いけど……下らない事考えたって時間の無駄だよ。今は今でしかない。」



………やはり彼は私の動向から察していたのだ


以前の世界ならもっと巧く気を反らせていた別れを今の私は重く感じている

一度味わった絶望がどうしても忘れられなくて楽しくて幸せであればあるほど脳裏を掠める


彼はきっと以前からそんな私に気付いていながら責めるでも慰めるでも無く見守ってくれていたのだ

うじうじとした情けない私をそのままに包んだ上で今を共にと強く導く彼の言葉



「はい。」


そして手渡された魔法のランプに涙が溢れそうになった


「………え………いつの間に……」


「今だけど。」


常人にはあり得ない事をサラリと答える彼に情けなく笑いながら今を象徴する様に輝く小さなランプをぎゅっと抱き締める


「すみませんイルミさん……ありがとうございます!」


胸に温かさが広がってじわりと身体が満たされて行く

素知らぬフリをせずに私の心を救う彼は私の世界にいた頃よりも確実に私に寄り添ってくれていた


「別に。」


なんて淡々と言いながら再び腕を差し出した彼にぎゅっと抱き付けば

彼は目眩がする程に美しく余裕の笑みを浮かべ

私は途端に頬を染めたまま控え目に腕を組み直したのだった






/ 1349ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp