第2章 そばにいたい
「……なにやってるの……?こんなところで」
リョーマは、打っていたラケットを止めた。
ゆっくりとラケットを下げてその場に置く。
そして上から何段目かの制服のボタンを外しながら言った。
「待ってた」
強い、強い、眼差し。
生意気そうに、こちらに目を向けて。
「こっち 来てよ」
目に入りそうな長めの前髪が少しだけ風で靡いた。
こっち といっても手招きをするわけでもなく、ただそこに立って。
を見つめた。
「……見送りいかないっていったよ、私」
「いいから」
はゆっくりと足を前に踏み出していく。
重い足。
今目の前にいるリョーマが遠く感じる。
「……行っちゃうんでしょ?行くんでしょ?」
「…………」
「だから、そんな格好……してるんでしょ?」
「…………」
「リョーマに会えた、水曜日を別れの日にしないで……幸せなままでいさせて……今日だけはリョーマに会いたくなか……っ」
言いかけた言葉は、リョーマの唇で塞がれた。
絡めてくるリョーマの舌。
会いたくなかったはずなのに、リョーマに身をまかせてしまう自分が歯痒かった。足に力が入っているのか抜けているのか
寧ろ立っているのか座っているのかもわからなかった。
リョーマの舌が、ゆっくりと離れていく。
離れたはずのリョーマの唇を、は自分で引き寄せた。
「だったら、幸せなままでいさせて!」
リョーマを求めて、は自分の舌を絡ませる。
リョーマの肩から首に手を回して。
忘れないように
忘れられないように
忘れてほしくないから
リョーマは密着するの腰を掴んでから唇を離して言った。
「容赦しないよ?」
リョーマの言葉に返答を送るかのように、はリョーマの身体を抱き寄せて。
「容赦なんか、しなくていい」