第2章 そばにいたい
今日リョーマは旅立つ。満ちる可能性を全て自分のものにするために。
リョーマに必要なのは私じゃない。
リョーマが懸けることを邪魔したくない。
でも、この水曜日だけは私の宝物として持っていたいの。
悲しい水曜日にしたくないの。
あれからリョーマとは、会ってない。
そう、もともと水曜日だけに会える彼だった。
飛行機の時間も、聞いてない。
もう、行ったかもしれない。
まだいるかもしれない。
既にリョーマに支配された頭を抱える。
リョーマってどんなだった?
どんな声?どんな顔?どんな姿?
このまま離れていいの?このまま忘れるの?
気がつけば外に飛び出していた。
リョーマ!リョーマくん……!
飛び出した先は、あの高架下の芝生。
リズムなんかとれなくなった呼吸を繰り返しながら走る。
もうすぐ会える時間なの、リョーマと会える時間。
土手を飛び越えて、着地した。
聞こえる、音。テニスボールが跳ね返る音。
「遅いよ、来るの」
リョーマはそこにいた。
水曜日に彼と会える場所。左手にラケットを持って何も変わらない。
けれど
見覚えのない、リョーマの服。
リョーマに会う水曜日は、袖の赤いシャツに黒のハーフパンツ。
そうなはずなのに
彼の姿は、制服だった。
「飛行機、乗り遅れたらどうしてくれるワケ?」