第13章 心配【降谷夢/リクエスト小説】
「いい加減“素直”と“従う”の言葉の意味を覚えたらどうだ」
「いい加減、貴方一人が無茶をするのはやめてほしいのですが」
また、だった。任務中に降谷さんは自分は大丈夫だと…少し常識を外れるような危ないことばかりする。確かに、それがこの人の仕事だ。
仕事だけど…風見さんとも話すことが多々ある通りで…少しばかり、無茶が過ぎる。
待機命令が出ていたけれど、それに我慢ができずに私は降谷さんの後を追いかけた。
それが今回の呼び出しの内容。
降谷さんの机の前に注意されて立っている私に、視線が集まっているのは分かっている。だけど、だけど、とそればかりが頭に浮かぶ。
「貴方を待つ側の気持ちにもなってください」
「キミにはできないから、僕がしているだけだ」
「…っ…役立たずだとおっしゃいたいんですね」
そうじゃない、と額に手を当てて深い深いため息を吐かれた。
「もういい、戻れ」
悔しかった。
悔しくて…苦しくて、降谷さんに背を向けて下唇を噛み締めた。
始末書を記載するように風見さんから言われ、私は何も間違っていないと言えば形だけでも、と宥められた。
…風見さんだって、降谷さんの右腕として彼だけが無茶をするような状況にはたびたび納得をしていない。もちろん、尊敬も信頼もしているし我が公安の鏡だと思うし…
「零の、馬鹿」
いつもの資料室兼作業場でキーボードを叩く指につい力が入ってカチカチと音を立てる。
恋人として触れ合う時間の甘さが長くなればなるほど、どうしても…彼の無茶な行動が心配になる。
待機命令を出されるたびに、行き場のない焦りに振り回される。
どうしたらいいのか。
「パソコンを壊す気か」
国民からの税金を、なんて後ろから聞こえる皮肉。
…大好きだけど、今は聞きたくない声。
「壊れないですよ、貴方に似て頑丈ですから」
「…まだ怒っているのか」
「貴方こそ」
始末書を作成中だから、感情的になりたくないのに。
どうして降谷さんがここに来るのか。
「そちらにいらっしゃるのでしたらついでに…始末書、できましたので持って行ってもらえますか」
はい、とプリンターから印刷された書類を降谷さんに手渡し。
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