第11章 雨宿り【松田・萩原贔屓/警察学校時代】
「もしもし、零?」
『…突然どうした?…ってその音、外?雨濡れた?』
「大正解。だから、迎えに来てほしいなぁって」
「俺たちの傘も持ってきて降谷」
「降谷くんお願いっ」
私が話す携帯に声を近づけて零に向かって話す二人がなんだか面白い。
『…なんでそいつらも一緒にいる』
「あはは、雨宿りしてたら走ってきて襲われた」
「襲ってないだろ」
「でもセクハラは受けた」
携帯の向こう側から向けられる無言は怒っている印。
「待て待て、降谷が怖い」
『それで、とりあえず傘はお前の分だけでいいんだな?』
「お願いしまーす」
「三本!」
「降谷!待って!切らないで!!」
「二人ともうるさい、鼓膜破ける」
すぐ行くから、と零が電話を切るときの声が少しだけ焦っているようで。…嬉しくなる。
「相変わらずラブラブだな」
「褒め言葉」
頬が緩む私を楽し気に眺める二人が、濡れた煙草に火をつけて。
煙臭いと文句を言いながら零が来るほうを眺めていたら…そんなに待たずして寮のほうから走ってくる姿が見えて手を振った。
その手には、さしている分を除けば傘が三本。
「零っ!」
走って向かってくるその人は一直線に私に向かって、その勢いのまま私を抱きしめてくる。
「……予想してたけど、なんでそんな格好で男といるんだよ」
心臓の激しい音が伝わって…急いでくれたんだなっていうのが伝わる。
そんな格好、というのが透けたシャツを指されていて、零に見られるのは恥ずかしくて小さくごめんと謝罪をした。
これ着て、と零が着てきたパーカーを着せられて。
「あとこれ、ついでに」
「さすが降谷!」
「降谷いい男!」
「それ以上言うなら渡さないぞ」
からかい口調で言うから零が傘を渡すのをやめようとして謝る二人。
雨はまだ止む様子もなくて。
傘が4つ並んで歩く。
4人で騒ぎながら…寮に帰っていった。
騒ぐ私たちの声が聞こえたとヒロくんと伊達さんが玄関でタオルを用意して待っていてくれて。
大好きな、みんながそこにいた。
【fin】