第9章 アンケ夢/安室透【痴話喧嘩】
「〇〇さんは、安室さんのこと大好きなんですよ!!」
…私たちが梓さんを見て目を見開いた後、透さんは肩を揺らして笑うし私は本当に居た堪れないくらい恥ずかしくなった。
「すみません、僕が間違ってました」
嬉しそうに笑う姿に、何も言えなくなって。
「良かったですね、〇〇さん」
「…っ、梓さん…どこまで天然なんですか」
そしてどこからが計算なのか、教えてほしい。
「…透さんと仲直りしたくて…来ました」
そうじゃないとモーニングに寄らない。
そんな、…
「…透さんに、冷たくされるのはやだよ」
背中を支えるような、梓さんの手に安心して、声を絞り出す。
「透さんが、好き」
「…………少し、懐かしい気持ちになりますね」
それは、透さんとしてなのか零としてなのか。
「〇〇、今夜一緒に帰りましょうね」
後で連絡をしますと優しい笑顔。
…その顔に安心して、頷いた。
「よかったですね!」
私の苦手な女子の距離感で近づいている梓さんなのに。私はそれが、少しも嫌じゃなくて。
「…梓さん、ありがとうございます」
ぎゅ、とその体に抱きついて笑った。
「行ってきます」
笑いながら梓さんから離れると、透さんの腕が私を引っ張る。
「言う相手を間違えてませんか」
「……零、大好き」
透さんにしか聞こえないように耳打ちをすれば強い力で抱きしめられて。
「昨日触れられなかった分、覚悟しておけ」
行ってらっしゃい、と背中を押されてポアロを出たけど。
「……あれ、〇〇姉ちゃんどうしたの?」
「え、あ…ぽ、ポアロでモーニングを」
「〇〇さんおはようございます!…って…顔赤いですけど大丈夫ですか?」
「大丈夫!!」
蘭さんとコナンくんと鉢合わせた私は、声が裏返った上に、大きな声が出て。
「…相変わらず嘘つくのが下手だな、〇〇姉ちゃん」
呆れた顔で蘭さんの腕を引く小学生。
ポアロを横目に見れば窓ガラス越しに手を振る二人に…
私は泣きそうなくらい、恥ずかしくて。
でも、…嬉しかった。
同性と仲良くなるのが苦手な私に優しくして寄り添ってくれる梓さんと、大好きな…愛おしい恋人。
ポアロで働く二人は、…今日も癒し度の高い元気を分けてくれた。
【fin】