第7章 アンケ夢/降谷零【警察学校時代】
じゃあ、と言って頭を撫でられた。
…初めて。
なんだかくすぐったい気持ちが勝る。
降谷くん。いつも私を名前で呼ばないのに。
…初めて呼ばれた。
嬉しくて、…胸が高鳴っているのがわかる。
「降谷くん…」
「なに?」
「…私、昨日…なにか、した?」
「…なにも。記憶ないのか?」
「楽しかったのは覚えてるんだけど…」
「そう……特には。あえて言うなら、伊達の膝の上占領してたぞ」
「うそ」
「ほんと。重たくて伊達、今日立てないかもな」
「っ…」
「…ちっこいくせに、重たいもんな?」
「降谷くん嫌いっ…」
伊達さんには謝らなきゃ。
でも…
「その嫌いな奴に一晩中抱きついてきたけどな?」
それは失礼しました!と舌を出して共有フロアを出て女子寮内へ。
仲良くなれるかもしれないと思ったのに変わらない態度に悲しくなる。
…でも、着てるパーカーからは降谷くんの優しい匂い。
部屋に戻ればルームメイトはまだ起きていなくて。水分を取ったあと、布団に潜って着ているパーカーの匂いに目を瞑った。
改めて睡眠をとったけれど。
その日、誰にも言えない夢を見た。
降谷くんとキスをする夢。
優しく笑う彼。
『俺が好きって言ったらどんな顔する?』
…私が好きなのは、ヒロくんだったはずなのに。
彼にそんなことを言われる夢を見て、恥ずかしくて。
目覚めてみんながいる食堂へ呼び出される。
少しだけまだ頭痛いと言えばヒロくんが二日酔いに、と薬をくれた。
初めて多くお酒を飲んだけど…またこの人たちと飲みたいと思う。
次は量を控えることになるけど…
「伊達さん、昨日ごめんなさい」
「あぁ、大丈夫大丈夫。それより降谷に何もされてないよな?」
「…っ、当たり前じゃないですか…っ!」
夢でのキスを思い出して、顔が赤くなれば。
「「「「降谷」」」」
「何もしてないのはお前らも知ってるだろ。…大体抱きついてきたのもそいつだ」
「抱きしめてたのは?」
「おかしいな、…布団をめくった時に見たのは降谷が」
「二度と飯作らないぞ」
それ以上言うな、と脅す雰囲気。
脅し方が奥さんというかお母さんの特権みたいな感じで笑う。
「…ヒロくん、また飲むとき誘ってくれる?」
「もちろん」
みんなで飲みたい、と笑って言えば次は一緒に寝ようなって松田さんに言われて顔が赤くなる。
それが、楽しい楽しい初めて規則を破った日の話。
終