第5章 あむぬい【なんでもない話/突発番外編】
一週間、零と会ってなくて。
今日はポアロにいるから少しでも会いたいと言われたから…ランチに来たとき。
タイミング悪く買い出しに出ているからもう少ししたら戻って来ますよなんて言われれば待つしか選択肢はなかった。
「〇〇さん、これ見てください!」
「え、可愛い」
羨ましい、と素直に思った。
裁縫上手なお客さん(女子高生)からプレゼントされたと飾ってあった両手ほどのサイズのぬいぐるみと、70センチくらいかな?両腕に抱えるほど大きなぬいぐるみ。
安室透イメージ。
「梓さん、…え、これ…可愛い」
「安室さん、飾るのは恥ずかしいからやめてほしいって言ってましたから持ち帰られると思いますよ?」
「………この大っきいぬいぐるみ、少し借りても良いですか」
「どうぞどうぞ」
可愛い。
目が大きくて、少しタレ目。
零のことよく見てるなぁとわかる出来栄え。
「…めっちゃ好き」
抱きしめて顔を埋める。
…零に見習って欲しいくらい可愛い。
「それ、本人に言ってもらえませんかね」
「おかえりなさい、安室さん」
「透さんおかえりなさい」
胸元に抱きしめてぬいぐるみの顔とくっつけて幸せ気分。
久しぶりにみた零は変わらず元気そうで安心する。
「〇〇、返してください」
「自分のぬいぐるみ持ち帰る趣味は透さんにないと思うから、私の家に置いても良いよ?」
「〇〇には絶対に渡しません」
返してください、と取り上げられそうになったので席を立って微笑む。
「透さん毎日会えないじゃん」
「それとこれは関係ありますか?」
「可愛い可愛い透さんぬいが私は欲しいと思ってる」
「…あのー、よかったらお客さんに言っておきましょうか?」
もう一つ作って欲しいと、と梓さんからの提案に目を輝かす私。
「梓さん、ご迷惑でしょうからやめて下さい」
「断られても良いから聞いてて欲しいな!」
できればスーツ姿で、と追加リクエストを述べれば透さんはとても真っ黒な笑顔で私を捕まえて。
「今日はお店に立ち入り禁止です」
ぬいぐるみを取り上げられて、お店の外に押し出された。
探偵事務所に、戻っても諦めきれなくて。
帰り道にポアロを除けば安室さん持って帰っちゃいました、と言われて。
不満。
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