第1章 初夜/降谷【警察学校時代】※裏
高校時代に、剣道の交流試合で仲良くなった人がいた。
景光。
…ヒロ、とみんなに呼ばれていた彼はその日捻挫していた私に唯一気づき、テーピングを巻いてくれた他校の生徒。
「ヒロくん!」
「〇〇、久しぶり。本当に入校できたんだな」
「できたってなに、その言い方!」
制服と剣道着でしか会ったことがなかったヒロくん。
まだまだ着慣れないスーツは馬子にも衣装だと笑い合った。
「おい、早く行かないと受付混み合うぞ」
「悪い、ゼロ」
「……誰だ、そのちっこいの」
二人が大きすぎるだけだと喉元まで出かかった。
「紹介する。〇〇…高校の部活で仲良くなってな」
「…お前のタイプってこんなのなんだな」
「ヒロくんなんなのこの人!」
出会いは最悪な印象だった。
人のことちっこいって言うし、女の子にきゃーきゃー言われるのに慣れている様子の彼は私以外には優しく笑っていて。
珍しい金髪だとしても。
確かに綺麗だけど。
「ヒロくんの方が格好良いじゃん」
…そう、私が最初に惹かれていたのは…
のちにスコッチとコードネームをもつ彼だった。
警察学校は全寮制。
ルームメイトとは適度に仲良くして、深く関わらない。
それが他人と良い距離感でいる手段だとその頃には覚えていた。
…零と再会する一年間のように。
でも、それでも私の中に特別があって。
ヒロくんが事あるごとに誘ってくれて。
当時の成績は、零、伊達さん、ヒロくん、荻原さん松田さん常に5位にはその名前が並んでいた。
…私は常に6位。零は常に1位。
順位はそんなに気にしてなかったけれど、零に小馬鹿にされるとよく言い合いになった。
その度に零を小学生かよと揶揄する4人目線の理由は付き合うまで分からなかったけど。
グループで動く際に6人や2・3人で動くことが多かったせいかこのメンバーの中に私もいることが多くなって。
成績上位6人、として一括りにされてはチームを組んだ。
零はその中でも飛び抜けるように成績も運動も…全てが抜群で。
「ちっこいの邪魔」
いつも、意地悪だった。
…零が私の名前を呼んだのは確か二人一組で模擬捜査を行うことになったとき。
まるで仕組まれたように私と零が残されて。
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