第22章 キスの日/5月23日の花麒麟※沖矢(赤井)夢
沖矢さんじゃない。
振り返れば、何かが重なった。
何かじゃない。
知ってる。
知りすぎるほど、知ってる。
その厚い唇も、差し込まれる熱も、人の体温をかき乱すようなその舌の動きも。
「〝早くキスをして〟」
「……っ、はぁ、?」
何を突然、と離れた唇に息を整えながら睨みつけた。
「この花の花言葉だ」
見せられた花の名前が書かれた札。
花に刺さっていたのだろう。
その札の裏に書かれているのは花の特徴と、花言葉。
〝早くキスをして〟
っ……なんて花を!! と思いながらも、私はあの瞬間は恋人に向けて買っていたのだから店員さんが万が一そこを含めていたとしても間違いじゃない。そう、この花の色が赤じゃなかったら。それだけなのに。
「そして日本では今日はキスの日だそうだな」
「き、すの日……?」
懐かしい響きだった。
ああ、あれは…松田さんだっただろうか。
昔の友人の顔を思い浮かべれば、少しだけ冷静な気持ちになったのは一瞬。
赤井さんが唇を舐めて、まるでこちらに集中しろとでも言うように見るから…また、体が疼くように熱くなった。
「積極的な君は、好きだぞ」
「ふざっ、……んぁっ」
駄目だって。
嫌だって。
そう思ってるのに、快感に思考が追い付かない。
この人のキスは、毒だ。
くたりと力が抜け、腰を支えられては体がその熱を求めてる。
「腰を抜かすな。まだだ」
「っ……やっ」
拒絶、は口づけに飲み込まれた。
赤井さんの右手が私の両手首を押さえて、左手が胸に触れる。その突起を指ではじかれれば、体は素直に反応を示す。快感に驚いて絡む舌を吸い上げれば、ニッ、と笑うその目。
赤井さんの舌が、下顎を伝い喉元から胸元にたどり着く。
「どうされたいか言えるな」
「……っ、帰りたい……!!」
どうして揶揄うのだ。
どうして。
「こんなに濡れた状態で歩けるのか?」
その左手がショーツをなぞって
「ンゥゥゥ……ッッ」
陰核を爪ではじかれた。
「イけ」
やめて。
やめて。
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