第17章 水着【降谷/警察学校時代】
「男の人ってどんな水着が好きなの?」
共有スペースで課題を広げるふりをして、雑誌を目の前に置いた。
「布面積が少ない奴」
「…きいた相手が間違いだった」
萩原さんが雑誌を見ないで即答してくる。
「どうした?」
「ヒロくん、助けてっ」
「はいはい、いつになく険しい顔してたけど」
助けて、というのが相談を聞いてほしいのだとすぐに察してもらえる辺り恵まれているなと思う。
「いや…友達からスパリゾートの招待券貰ったんだけど、ペアで」
「…へぇ」
よかったね、と言われたけど…それで悩んでいるのだとヒロくんの前に雑誌を広げる。
「水着なんて学校のとき以外で着ないからわからなくて。萩原さんにも相談乗ってもらったら、布面積が少ないやつとか言い出すから」
「へぇ」
「諸伏、その笑顔怖いから!!ごめん!!」
私からは見えない表情をしていたらしく、萩原さんが焦った様子で笑ってしまう。
もっと怒られてしまえ、と思うけどそうも言ってられない。時間がない。
「で、雑誌見てたんだけどヒロくんはどんなのが好き?」
「……悪いことは言わないから、それ降谷に聞いたほうが良いよ」
「なんで?」
それができたら既にしている。できないから、他の人の意見を教えてほしかったのだ。
「そこに俺らの趣味が入ったら、あいつ本気で嫉妬するから」
「趣味っていうか、意見が聴きたくて」
「〇〇は、俺らに見られたいの?」
的確過ぎる質問に、少しだけ俯いた。
「…違う、零に見てほしい」
零に喜んでほしい。
「それならあいつに聞いたほうがいいよ」
「…………見せるのも恥ずかしいのに、相談するのはもっと恥ずかしい」
そうだろうけど、と言いながらヒロくんが私の目の前に座り片肘をついて見つめてくる。
「ところで降谷のこと、もう誘ったの?」
「まだ」
「その有効期限、来週末でしょ?買いに行く時間も考えたら」
「今日くらいに誘わないと間に合わないと思うけど」
「…諦めようかな」
「諦めないで頑張って」
いつもヒロくんは私の背中を押してくれる。
嬉しいけど…今回は少しプレッシャー。
萩原さんも頑張れ、と背中を叩いてくれるけど。
「なにしてんだ?」
その話題の相手が突然現れて思わず立ち上がった。
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