第16章 水着【安室(降谷)夢】
「〇〇、梓さんとプールに行かれるって本当ですか?」
「…さすが情報通ですね」
今週の休みが一致した平日。
蘭さんたちがプールに行った話をきいて誘われながらも断った側なので、羨ましいとは口にだすことはできずにいれば梓さんが羨ましいとぼやいたのがきっかけ。
私がたまたま目の前にいて、そのぼやきを聞いて、目が合ったから誘われた。
…だけど、正直、行きたかったから楽しみにだった。
「そういえば僕、〇〇の水着姿見たことはないのですが」
安室透はね!と心の中で言い返すけど、口にだすわけにもいかない。
「そうですか?じゃあ、機会があれば行きたいね。その前に遊園地と水族館と」
「行きたいところがたくさんありますね」
降谷零が忙しいからどこにも行けないので、という思いをにっこり笑顔に込めたら“当然だ”と無言の笑顔で返された。
「帰りに水着買いに行こうかなって思ってて」
「僕今日早上がりですから、車で送っていきましょうか?」
「え、ほんと?助かる」
ついでに選ぶの手伝ってくれると助かるんだけど、と付け加えたら喜んで、と返されて顔が緩む。
…昔はそれすら言えなくて一人で行こうとしたけど捕まって結局零に全部選んでもらったんだっけ、なんて遠い昔を思い出して。
「〇〇、思い出し笑いはスケベって言われるの知ってますか?」
「透さんはムッチリスケベですね」
「〇〇そんなことありませんけど」
「貴方のそういうところは私が知ってるからそれでいいの」
「…確かにその通りですね」
最近口が上手くなってきましたね、と言われて誰かさんのおかげで、と笑顔で返す。
透さんとだと、アイコンタクトのやりとりが多くて言葉はなくても伝わることが嬉しく思う。
先に車で待っていてくださいと鍵を渡されて受け取って駐車場に向かう。
「お待たせしました」
「お疲れ様です」
運転席に乗り込みながら助手席に体の重心を向けて触れるだけのキスをする。
「珍しいですね、〇〇が梓さんとって」
「うん、蘭さんたちがプールに行くときに誘われたんだけど断ったのは知ってるでしょ?」
「ええ、女子高生の肌に挟まれるのは嫌だとか言って」
充分魅力的なのに、と付け加えるから私自身零のそういう言葉に慣れてしまったなと思って笑ってしまう。
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