第15章 ご機嫌な彼女【降谷視点】
小洒落たBARでも、イタリアンやフレンチでもなく、居酒屋で飲みたいと言ったのは彼女。
鼻歌を歌いながら機嫌良さそうに〇〇が前を歩く。
先に帰って良いよ、と言う足はおぼつかなくて。
もちろん、先に帰るなんてことができるわけはない。
おとと、とふらつく彼女の肩を手で支えた。
酒を飲み過ぎてるのは見てわかる。
止めなかったのは、あまりにもご機嫌だったから。明日も休みだし、たまにはハメを外させることもありかなと思ったのが本音だ。
れー、と言いながら抱きつく彼女は酔っ払い。
オンとオフの切り替えがはっきりし過ぎてたまに俺でさえ驚くことがある。
自宅に着いてシャワーを浴びさせるほうが良いかと思いながら、疲れた、と玄関で座り込む〇〇に小さく笑う。
「〇〇、ベッドに行けるか?」
シャワーを、と考えてはいたけれどこの状態に諦めて今日くらいはこのまま眠らせてやるのもいいかと考えを変えたのに。訊ねればやだやだ、とごねる子供のような態度。
正直、可愛いと思った。
抱き上げて連れて行ってもいいのだけれど、少しだけ困ったような顔を見せれば〇〇はおとなしく立ち上がり抱き着いてくる。
相変わらず単純だなと思いながらも腰を抱き寄せて深く深くキスをした。
「このまま抱かれるのと、乱暴に抱かれるのとどっちが良い?」
選ばせてるようで選ばせていない二択。
〇〇は顔をそらしながら、
「れーが気持ち良い方が良い」
そう言ってきて…思わず、深呼吸をした。
お酒のせいもあるだろうけど、紅潮する頬。
潤む瞳。
「ほんと、…敵わないな、キミには」
「れー、怒った?」
「ん?どうして怒られると思った?」
「ん…れー、怒るの、やだ」
「怒ってないから…な?」
こんなに可愛いのに。
こんなに、愛おしいのに。
「怒るわけないだろ?」
「っ…れー、…すき」
笑顔を向ければなぜか紅潮する頬が色を深く染めて。
舌足らずな告白に胸が高鳴るのが我ながら少し照れくさい。
〇〇を抱き上げてベッドに運ぶ。
「〇〇、乱暴に抱かれるのと優しく抱かれるのと…どっちがいい?」
もう一度聞きたくて。
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