第14章 フェチ【景光/警察学校時代】
独占欲。自分の恋人(もの)でもない彼女(それ)に、向けるのは間違いだと自覚している。
久しぶりに竹刀を手にして、彼女と向き合った。
出会いは、この場だったなと懐かしく思いながら。
「ヒロくん相変わらず強い」
「〇〇は少し弱くなった?」
「ヒロくんがもっと強くなっただけです」
後輩の試合を見に行くことになったから付き合ってほしい、〇〇からの誘いはそういうものだった。
久しぶりに二人きり。
…幼馴染の恋人だというのに、少し浮かれた気分になるのは許してほしい。
後輩たちの試合も終わり、先輩方の試合が見たいと後輩にせがまれて俺たちが手合わせをした。
相変わらず、まっすぐぶつかってくる〇〇。
決してとても強いわけではない〇〇は、基本がしっかりしていて型が綺麗。
…強がりで、負けず嫌い。
面を外して熱い、と手ぬぐいを外す〇〇。
「ヒロくん、相変わらず格好いいね」
防具を外して、汗を拭う姿に目が奪われた。
…相変わらず可愛いと返しそうになって、内心慌てて飲み込む。
「ヒロくん?お~い」
「あ、ごめん、どうした?」
「帰り、少し飲みに行かない?」
「いいの?降谷いないけど」
「ヒロくん気にしすぎだよ、私だって男友達と二人で飲むよ」
着替えてくる、と言って更衣室に向かう〇〇を見送って、俺も更衣室に向かおうとする。…そしてさきほどまで〇〇が立っていた足元に〇〇がつけていた手ぬぐい。
拾い上げて、ふんわりと香る汗とシャンプーの匂いと…〇〇の匂い。
「ヒロくん!」
拾わせてごめん、と〇〇が駆け寄ってきて。
抱きしめたい、そう思った。
「大丈夫?疲れた?」
「…ああ、ちょっと」
疲れてるな、と〇〇の腕を掴んでベンチに座る。
「飲み物持ってこようか?」
近づく〇〇の匂いに、〇〇の肩に頭を預ける。
「少し、このまま」
「珍しいね、ヒロくんがバテてるの」
バテてるんじゃなくてアテられてるんだけどな、なんて心の中で呟いた。
「ちょっとこのまま」
「うん、大丈夫だよ」
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