第15章 最終章 大好きです、魔王様
それから、3年経った。
19になったは子供っぽさが抜けて益々美しくなった。
だが、笑う回数が減った。
そして、いくら勧められても、どんなに条件が良くても縁談を全て断っていたため、未だ未婚だった。
「様、朝食ができました。」
「そう、ありがとう。」
いつも笑って、沢山の料理を美味しそうに頬張っていたはいなかった。
マナーも完璧で、美しい孤高の姫。
その姿は昔のとはかけ離れていた。
それと、もう一つ。
1日に数回、遠くーー館の方角ーーをみて黄昏れるようになった。
哀愁が漂うその横顔はとても美しい。
縁談はもちろん何件も寄せられた。
でも、それを全て断っていく。
新入りのメイドと、がさらわれるよりもっと前からいるメイドがその姿をみて話していた。
「様って、全然笑いませんよねぇ。何を考えているんでしょう。」
「昔の様はよく笑う方だったわよ。天真爛漫で、愛らしくて。」
「えぇ?想像できません。なんで笑わなくなっちゃったんでしょうね。」
「攫われたのよ。魔王に。それからね。」
「その話、聞いたことあります。でも、勿体無いなぁ。笑ってれば縁談もたくさん来るでしょうに。」
「縁談なら沢山きているわよ。全部断っているだけ。」
「なんででしょう。勿体無いですね。」
「“忘れられない人”がいるんだって。もう死んじゃったらしいけれど。」
「うわぁ、ロマンチックぅ」
「そのせいで、笑わないのかもしれないわね。その、忘れられない人が亡くなったせいで。」