第14章 二人で
コンコン、ノックの音が響く。
あら、アンナかしら。
まだ早いわ。もうちょっと寝かせてよ。
「様、失礼します。」
(アンナじゃ、ない・・・)
入ってきたメイドの顔を見て、全てを思い出した。
昨日泣きながら城に連れて帰ってこられた私はみんなが嬉しそうな顔をするのも、おかえりとか怖かったでしょうとか、もう大丈夫とか言ってくれたのを全て素通りして部屋に閉じこもり、ふわふわで高級なベッドの上で泣きながらいつのまにか寝てしまったんだ。
「おはようございます。昨夜はどうなさったんですか?朝食、お食べになりますか?」
ここで“ありがとう”と言って笑えればよかった。
いつも通りの私だった。
でも、できない。
魔王のことを思うと枯れたはずの涙がまた出てくる。
急に泣き出したをオロオロしながら見つめるメイドに「いらない、でてって」と言うのが精一杯だった。