第14章 二人で
やっとのことで目を開けた。
お腹がズキズキと痛む。
「ん・・・」
「姫様、お気づきになられましたか!」
(姫、様?)
いつもと違う呼び方に違和感を覚える。
後ろに乗っているのは、誰・・・?
恐る恐る後ろを振り返ると心配そうな勇者がいた。
「ゆうっ・・・まお、さまは・・・?」
「もう大丈夫です。俺が、」
倒しておきましたから。
「え?」
世界の喧騒が遠い。
街の中心部にいるのに、周りの音がガラスを隔てた一つ向こう側のように聞こえる。
涙が両目からあふれ出した。
魔王様が?魔王様が?そんなこと、手の込んだジョークでしょ?
ねぇ、そう言ってよ。
魔王様、明日になればまた「おはよう」って笑ってくれるでしょ?
「姫様?なんで、泣いて・・・っ!」
涙が止まらない。
顔を覆って嗚咽を漏らすばかりだった。
「もう、大丈夫ですから。怖かったですね。」
そう言ってくれる勇者に怒りを覚える。
私の、誰よりも大事な魔王様を・・・っ
本人は良かれと思ってやったのであろうことがまた辛かった。
城に戻ると父様や母様、メイドさんが迎えてくれるが、みんなにも挨拶することはできず、ただ部屋にこもって泣き続けた。
『そんなに泣くなよ』
『どうした、どうした。聞いてやるから、話せよ。』
そう言って欲しい。
魔王様、お願いだから。また笑いかけてよ。