第12章 異変
魔王が渡してくれた飲み物は、甘いけれどどこか苦い味がする。
大人の味ってやつか。
「、悪かった。お前を突然連れて来ちまって。」
「そんな・・・魔王様も、仕方なかった事じゃないですか。」
「ほんと、お前は優しいやつだよな。なぁ、お前、幸せだった?」
「何言ってるんですか、急に。幸せだったに決まってるじゃないですか。」
「そうか、それは良かった。」
は何故そんな事を聞いているのかわからなかった。
でも、勇者が攻めて来たんだとしたら?
魔王は一人で死のうとしているのかもしれない。
「勇者が来てるんですか?」
魔王が一瞬目を見開き、すぐにいつもの顔に戻った。
「何言ってるんだ、そんな事・・・」
「そうなんですか?魔王様っ!」
何秒かの沈黙のあと、魔王は長いため息をついた。
「本当お前はいつもいつも、予想しないような行動に出て、俺を驚かせて。鋭いんだよなぁ。」
(って事は、勇者が、来たんだ・・・。)
居ても立っても居られなくて魔王に「私も戦う」と言おうとしたとき。
視界がぐらりと揺れた。
次の瞬間目に映ったのはぼんやりとした魔王の顔。
はっきりとは見えなかったけど、泣きそうに、心配そうにの顔を覗き込んでくる。
「ごめんな、。愛してる。」
そう聞こえたのを最後に、は意識を失った。