第8章 魔王様は 私が・・・
はいつも二階で生活しているので、今日は2階だけでもいいか、と思った。
大きい館だから二階の探検だけでも十分に見応えがありそう。
の部屋のそばにある、風が気持ちよさそうなバルコニー。行ったことはないけど、今度行ってみようかな。
いつも美味しい食事を食べさせてもらえる食堂、その隣にあるキッチンはいつも良い匂いがしている。
一階へと繋がる階段。一階は大きなホールがあるらしいけど、また今度。
少し歩き、高価そうな調度品でいっぱいの応接間にたどり着いた。キラキラしていて眩しい。
応接間の側にある魔王様の書斎は 行ってはいけないと言われたから素通りしよう。
勝手に入ったら出歩き禁止になりそうで嫌だし。
そして、次に使用人棟に行こうとして足を止めた。
なんだか深刻そうな声がする。
ちらっと覗いてみると使用人が二人、周囲を警戒しつつなにかを話していた。
も知っている人だ。魔王の側近で、秘書さんの次に偉い人だと教わった人達だ。
悩みの相談かな、よくある光景だよねと思いそのまま進もうとしたのだが、会話の中に「魔王様」と聞こえた気がしてその場に立ち止まった。
柱の影で、盗み聞きしているような格好になる。
なんだか胸騒ぎがした。魔王様のことを使用人が深刻な声で噂している。
どんな内容かはわからないが。
側近の一人が言った。
「あまり大きな声じゃ言えないけど、魔王様、近々亡くなるだろう。」
「まぁ、死ぬために生まれてきた人だからな。」
(魔王様が、亡くなる?死ぬために生まれてきたってどういう事?)
気がつくとは魔王の部屋へと走り出していた。
(魔王様は死なないわよ。私が・・・死なせないんだから。)