第2章 その瞬間色づいた
「でも……ヒーローになりたいなんて夢、持っちゃいけないって、思って……」
視界が歪み、喉が熱くなり、泣きそうになっているのだと知った。
「誰にでも夢を抱く権利はある! 」
彼は私の瞳をじっと見たまま言い切る。 どこにそんな根拠が有るんだろう、と心の隅で思った。 少年はそのまま続ける。
「僕の兄さんは、人の夢を笑ったりしない! 僕もそうだよ。 “個性”をを持っているんだから、ヒーローになれる可能性はある」
「……理由になってない……」
だけど、私の瞳からは涙が零れた。 ぽろぽろと砂浜に落ちては吸い取られていった。
「君だって、ヒーローになれる」
私に夢を抱かせてくれた男の子。
速く走ることの出来る、プロヒーローを兄に持つ男の子。
彼の名前は、なんて言うんだっけ。