第3章 ジョーカーさん
城の磨かれた綺麗な廊下の床を、履き慣れない黒い革靴で歩く。
コツコツ、という音が心地良い。
「カムイ様…ねぇ…。」
ふと、妹であり、そして主であるカムイの顔が思い浮かぶ。
相当いい暮らしをしてきたんだろうなと思う。
幼い頃、生き別れた妹。
カムイは北の城塞で、臣下たちと暮らし、ボクは地下で、ひっそりと暮らしていた。
それから、ボクは地下から抜け出し、貧民街で体を売った。
ボクは、妹が羨ましかった。
何度顔も知らない妹を恨んだ。
ボクは腹が立ち歩くスピードを速めた。
そして、何かにぶつかった。
「おい、ちゃんと前見て歩、け……?!」
あ、朝カムイと一緒にいた人だ。
口をパクパクさせてどうしたんだろう?
「あの?ボクの顔に何かついていますか?」
「…アオ…様……?」
え?いまこの人ボクの名前…。
「いや、なんでもねぇ…。お前のことは聞いている。」
「あ、はい…。ジョーカーさん…ですよね?これからよろしくお願いします。」
「…あぁ…。」
浮かない顔をして、ジョーカーは去っていった。
そういえば、あの人…ジョーカーさん…どこかで会ったことがあるような…。