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『探偵』前世の記憶を思い出した時、彼は私の恋人でした。

第3章 記憶を思い出したら『緑川景光』の恋人でした。


私が仕事から帰ろうと職員室から出て行き、下駄箱から靴を取った時に呼び止められた。振り返れば最近私と噂になっている東先生が息切れしつつ笑った。

「都先生!」
「東先生、どうしたんですか?」
「あ、いや…今からお食事でも、と思いまして」
「ごめんなさい…私、今誰かと付き合うとか考えていなくて」
「そ、そうですよね…」

あはは…と乾いた笑みを見せて頭をかいた彼には申し訳ないが、今は本当に仕事が恋人だったりする。気持ちは嬉しいけれど元彼の景光くんがハイスペック過ぎて、付き合ったところで景光くんと比べてしまう。なにより東先生に失礼だろうと思ったし、結局付き合ったところで上手くいかないのは目に見えていた。

「ごめんなさい…」
「うん…あぁ。今日はもう暗いですし送って行きましょうか?」
「いえ、お気持ちだけ受け取っておきますね…ありがとうございます。それではまた…」
「あっ…はい、また明日」

そう私は軽く頭を下げて学校を出て行った。

ーーー。

「…」
「…っ」

なに、なんなの?なにかが私を追い掛けている気配がする。怖い、そういつもの道を歩いているだけなのに誰かが私の跡をつけている感じがした。音が重なる、やはり誰かがいる、そう思うと自然に早足になり、誰かに助けて欲しくて街灯の少ない道を走った。横に曲がろうとしたところで私は男性にぶつかった。驚きながらも優しく抱きとめてくれて、フードを深く被った男性は私を見下ろしている。顔は見えないけれど、誰でもいいから助けて欲しくて震える体を抑えながら助けを求めた。

「た、助けて下さいっ…」
「落ち着いて下さい、どうしましたか?」
「誰かが後ろから着いて来てーー…っ」
「後ろ。分かりました。少し待っていて下さい…見て来ます」
「ま、待って!お願いします…置いて、いかないで…」

私は彼の手首を掴んだ。反射的に私の顔を見る。そう、懐かしい…私を見下ろして来る顔は違う。見ず知らずのお兄さんだ。髭もそってしまって、髪型も変わってしまって、眼鏡をかけている彼。でも猫目で童顔なところは変わらないし。なにより…声が彼だった。変わってしまったが変わっていないのだ、私はぽつりと名を呟く。

「ひろ、みつ…くん?」
「!…人違いじゃないですか?俺と貴女は初対面ですよ?」
「!そうですかっ…ごめんなさい、もう…大丈夫ですから、失礼しますっ」
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