第3章 夢と過去①
一ヶ月前と同じようにうなされる凪の体を揺する。
開かれたその瞳を見て、和真の表情が強張る。
(また、左目が…)
凪の左目は再び金色に染まっていた。
この一ヶ月間用心深く見ていたが、凪の瞳に変化が起きたことは一度も無かった。
(どうなってんだ…夢が関係してんのか?)
あの日も凪はうなされていた。
怖がる娘をなだめて、視線を合わせる。
「凪、また怖い夢を見たのか?…前と同じ夢か?」
まだ暗い部屋の中、左目を注意深く観察しながら問う。
凪が頷くのを見て、予想が現実味を帯びる。
我が子の瞳をじっと見つめて、和真はあれこれ考えた。
あまりに真剣な表情で自分を見つめる父に、凪はひどく不安になる。
「父さま、わたしどこかわるいの…?」
和真は慌てて首を振った。
「いや、そういう訳じゃねぇんだ。ただ、怖い夢を何度も見るのはお前も嫌だろ?だから…」
そう話している間に、凪の瞳がすっと元の色に戻る。
それを見て、和真はまた少し考えてから、言葉を繋いだ。
「…今度、母さんに聞いてみようか」
凪はその言葉に、目を見開く。
「母さまに?母さまが、かえってくるの?」
さっきまでの恐怖と不安はどこへやら、ぱっと笑顔の花が咲く。
「もうすぐ休暇の時期だからな。戻ってくるはずだ」
和真は娘の頭を撫でながら、離れて暮らす妻を想う。
和真の妻…凪の母、麗(れい)は死神だった。