第9章 それぞれの任務
「……私の疑いは晴れたのですか?」
私の問いに胡蝶さんは頷いた。
「ええ。そうですよね煉獄さん?」
煉獄さんは再び姿勢を正し、お茶を飲んでいた。傍にはいつの間にかお茶菓子も用意されていた。
「うむ!! 竈門少年に追っ手が向けられた際に、その追っ手が君の名前を呟いていたと鎹烏から報告があった」
兄に向けられていた追っ手が…私の名前を口に……?
「つまり、鬼舞辻無惨はあなたが竈門くんと行動を共にしていたことは把握していましたが、別行動を取っていたことは知らなかったということになります。よかったですね。鬼舞辻が竈門くんに追っ手を出していて」
煉獄さんの言葉を付け加えるように胡蝶さんは笑いながら私の頬を撫でた。
「でなければ…あなたの疑いは晴れることなく、疑いが晴れるまでここから出ることが出来ませんでした」
ヒヤリとしたものが、胡蝶さんの指先から私の頬へと伝う。慈愛に溢れた一面を見せておいて……この人はこのように敵意を見せるのか…!! 私はつくづく兄に助けられる人生なのだと知る。
「と、いうわけだ。明日から、俺の継子として稽古をつけてやるから覚悟するといい!!」
…この人はこの人で昔と変わっていない。知らなかったとはいえ…自分の血縁者たちを死に追いやった張本人を鍛錬するだなんて…。煉獄さんは情に厚い人なんだなと思う。
「…は、はい!! よろしくお願いします!!!」
とりあえず…明日、兄に会えるように頼んでみよう、そう思いながら私は彼らにお辞儀をするのだった。