第7章 山ほどの手が
「まずは隊服を支給させていただき、体の寸法を測りその後は階級を刻ませていただきます。さらに今から鎹烏をつけさせていただきます」
数羽の烏が空から舞い降りて、私たちの元へ飛び散った。私の烏は綺麗な毛並みの烏だった。
「鎹烏…よろしくね」
この子の名前はまたあとで聞こう。そう思い顔を上げると、顔に傷を負った少年の険しい表情が目に映った。その少年は苛立ちを隠しもせずに鎹烏を殴り飛ばした。その血走った目の少年の近くには黒髪の子がおり、私は思わず走り出した。
「………なんだお前…」
間一髪だった。少年は黒髪の子に乱暴する気だったらしく、私はその腕を払い除けた。私の後ろには黒髪の子を庇うようにもう1人の子が立っている。
「…最終選別で気が荒ぶっているのは分かる。でも、だからってこの子のたちに暴力を振るうのは違うでしょ」
「だから…てめぇには関係ねぇだろうが!!!!!!」
少年が私の胸ぐらを掴み、もう片方の手で殴りかかろうと思い切り腕を振り上げる。私は身を庇うことはせず、真っ直ぐ少年の目を見る。少年は一瞬たじろぐ様子が見られたが、その拳を思いっきり私に振り下ろした。
「烏なんてどうでもいいんだよ!!刀だよ刀!!今すぐ鬼殺隊の"色変わりの刀"をよこせ!!!!!!」
何故そこまで刀に執着するのかその理由が分からない。しかし、彼からは焦りが見られ、その焦りが彼が鬼殺隊に入りたい理由なのかもしれないと感じた。彼の拳が私に届くまであと少し。だが、その前にその拳は掴まれる。
「止めろ!! なんで自分より小さい子に暴力を振るうんだ!!!!」
「次から次へと出てくんな!!!!!!」
少年は胸ぐらを掴んだまま、私を前後に揺らした。
「その手を離せ!! 離さないなら折る!!」
「あ? やってみろよ!!」
ボキッ
私が止めるまもなく、呼吸の音がしたかと思うと…骨が折れる音が間近で聞こえた。