第4章 必ず戻る夜明け前には
「…幸子。魘されていたが大丈夫か?」
目を開けると、兄がいた。私の隣には姉がすよすよと寝ている。……あたたかいな。
「……おかえりなさい…お兄ちゃん」
窓からは光が差し込んでくる。兄が帰ってくるまで起きておこうと思っていたが、やはり疲れが限界だったらしい。いつの間にか眠りについていたようだ。
「幸子。俺は鬼殺隊に入るよ」
兄の赤い瞳が真っ直ぐ私を見てそう言う。……不思議だ。あの悪夢の後でも、この赤い瞳は私を安堵させてくれる。私は微笑んで頷いた。この様子じゃ、夜明け前には間に合ったようだ。
「………うん。私もなるよ。鬼殺隊に」
姉を人間に戻す。このあたたかさを守るためなら私は何でもする。そう例え……
あの男を…殺すことになっても。鬼舞辻無惨
「だから一緒にお姉ちゃんを………」
私はそこで言葉を止める。兄が驚いたように目を見開き、慌てた様子で私を説得する数秒前のことだった。
「…………………もう!!!! お兄ちゃん、長男長男うるさい!! それしか言えないの!」
しばらく兄の説得を聞いていた私が、フンッと顔を背け布団に潜り込むまであと数分後の話だった。