第4章 必ず戻る夜明け前には
私たちが故郷から離れてから、まだ両手で数えられるほどの太陽が沈んだ。日が落ちて姉が起き始めた頃に、鱗滝さんは帰ってきた。しかしその後ろには兄の姿はなかった。
「お前の兄が、夜明け前にこの家に辿り付けたならば鬼殺隊として認めよう」
それだけ言うと、鱗滝さんは囲炉裏の前に腰を下ろした。……山から家まで往復したというのに息ひとつ乱れていない。恐る恐る私は彼の横に湯呑みを置いた。
「…あの…何か食べられますか…?」
鱗滝さんが帰ってくるまで時間があったので、私はあった材料で簡単だが料理を作っていた。勝手に使ってしまい怒られるかとヒヤヒヤしたが、鱗滝さんは頷き立ち上がる。
「貰おう」
そして、私の分のお椀を出すと、鱗滝さんはその器に注ぎ込み、私に手渡した。その器は淡い青色のおわんだった。他に誰かが住んでいたようで、他にも何個か器が見られた。
「……気にするな。昔いた子たちのものだ」
鱗滝さんはそう言うと、パクパクと食べ始める。私も口の中にいれるが、何分落ち着かない。静かな食事をするのは久々だった。……いつもは下の子達が騒がしくて、いつもそれをお姉ちゃんが宥めてたっけ?
「………うー…」
眠そうに目を擦りながら、姉が私の袖を引っ張った。私が姉の背を撫でると、姉は再び目を閉じる。……さっき起きたばかりなのに…。姉がすよすよと寝息を立て始めてしばらく…私は口に入れていた最後の一口をゆっくり咀嚼し飲み込んだ。
「…竈門幸子…だったな」
先に箸を置いた鱗滝さんが口を開く。私が返事をすると、鱗滝さんはお面の中から見える瞳で私をじっと見た。