第16章 私に向けられていた刺客と柱たち
「すごいです!! こんなに短い時間でカナヲさんに勝つなんて!!」
きよちゃん、すみちゃん、なほちゃんが私にお水やおにぎりを渡しながら、そう目を輝かせた。すごいすごいとはしゃぐ彼女たちに、私は苦笑いを零した。
「きよちゃん、すみちゃん、なほちゃんが応援してくれたからだよ」
機能回復訓練が始まって数日。私の身体は劇的な変化を遂げていた。まず身体能力が格段に上がり、特に視力は以前よりも遠くが見えるようになった。小さな傷なら、数分後には綺麗に傷が塞がる。それに、私は姉のように自分の身長を自在に変えることができた。
「…さて!! カナヲさんに勝ったということは、そろそろ任務に行けるかな!!」
とは言っても、栗花落さんとの勝負は簡単だったというわけではない。接戦どころか、私は何度も挑んでやっと1回勝ったのだ。栗花落さんはやっぱり強かった。あの人は自分の目の使い方をよく分かっており、相手をよく見るといったことが人一倍長けているようだった。
「………………」
よく勝てたなぁと、私がしみじみと栗花落さんの強さに浸っていると、周りが静かなことに気づく。
「………どうかした? すみちゃん」
私の服の裾をそっと握ったすみちゃん。よく見れば、きよちゃんやなほちゃんも暗い表情で俯いている。なほちゃんの身体がぷるぷると震えた。
「行っちゃうんですか…?」
ぐっと堪えるように言うきよちゃんに、私は察した。この子達は知っているのだ…私がどこで誰と戦いに行くのかを。そして、また怪我をしない保証なんてないということを。
「……うん。でも、またみんなに会いに来るよ」
私がそう笑いかけると、我慢が出来なくなったのかわぁっと泣きながら、3人は私の胸に飛び込んできた。ぐすんと鼻をすする3人を、私はぎゅっと抱きしめた。
「ありがとう。きよちゃん、すみちゃん、なほちゃんたちがお世話してくれたおかげで…こんなに元気になったよ!! お土産持って帰ってくるから!! ね、約束」
私が小指を出すと、3人は顔を見合わせて頷いた。本当に優しくて可愛い子たちだ。その後、胡蝶家の庭ではすみちゃん、きよちゃん、なほちゃんと遊ぶ…私の姿があったのだった。