第14章 鬼殺隊柱合裁判
私は姉の籠を背負い、細い道を歩いていた。私の横には気絶した兄が隠の人達に背負われている。隠の人達がチラチラと私を見ていたが、私は絶対に目を合わせなかった。隠の人たちは姉の入った籠を私から離そうとしたが、私が頑として受け入れなかったからだ。
「貴方もそこの人に負けないくらい重症なのよ? とてもじゃないけど、歩けるとは思えないわ」
そう言われたが、私は首を振って断った。今背負われたら、確実に気絶する。その間に姉を殺されないとも限らない…。私はフラフラする足取りで、列の最後尾で歩いていた。
「…大丈夫ですか? 出血も酷いですし、やはり我々が背負って…」
ふらつく私を支える隠の一人がそう私に声をかける。前の列とはだいぶ差が見られた。
「すみ…ません。でも…」
私の言葉に隠の人はふぅっとため息を吐く。そして、彼女は私に水筒を渡した。
「では、少し休憩をしましょう。貴方、前方に列を離れると伝えて頂戴」
「は…はい!!」
そして、その人はその場に腰を下ろす。
「まったく…頑固な怪我人ほど面倒なものは無いわ」
ぷりぷりと怒るその人は再びため息をついた。私は何も言えず、すみませんと繰り返した。
「……その籠はそんなに大事なものが入っているの?」
彼女の問いに私は頷く。隠の人たちには知らされていないのだろう。
「はい。この世の何よりも、私は大事に思っています」
「そう」
ガブガブと水を飲む隠の人に、私は意を決して聞いた。
「…あの…」
「お兄さんは無事よ。とりあえずは命に別状はないわ。貴方と一緒に山に入った2人の応急処置も終わった。鬼の毒によって蜘蛛になった人たちも後遺症は残るかもしれないでしょうが命の危険はありません」
私はその方の言葉にホッと胸を撫で下ろした。
「そう…です……か……」
すると、安堵したからか体中の力が抜けていくような感じがした。ふらっ…と体が傾く。
「ちょっ!!」
倒れる…そう気づいた時にはもうどうしようもなかった。私は骨折覚悟で地に向かって手を伸ばそうとしたが、視界の片隅に背負っていた籠が見えたため、咄嗟にそれを掴む。掴んだことでさらに体が後方へ傾いた。
「馬鹿っ!! 」
隠の人たちが慌てたようにこちらに手を伸ばした。何故そんなにも慌てているのか……
「っ!?」
それは…私が倒れた先は……断崖絶壁だったからだ。