第13章 那田蜘蛛山 ~刺激臭~
「………幸子…傷が痛むんだろう…? 禰豆子は俺が抱える」
兄がゼェゼェと呼吸しながら私にそう声をかける。兄は全身に切り傷があり、またヒノカミ神楽の反動からか肉離れも起きていそうだ。これ以上の無理は禁物だと、私は彼にそう言おうとして、振り返った……その時だ。木々の隙間から光る刀身が見えたのは……
「お姉ちゃんをお願…」
「ぐっ!?」
その影は私が動く前に兄を踏みつけた。そして、私の腕の中の姉に向かって刀身を振り上げる。
「っ!?」
出遅れた私は咄嗟に姉を体で覆い隠す。刀身は私横を切り裂き、私の横の木に傷がついた。
「逃げろっ!! 禰豆子、幸子逃げろ!!!!!!」
兄がその影の服を掴み、斬撃を逸らしてくれたようだ。私は目が覚めた姉を連れて逃げ出す。ゴッと音がし、振り返ると栗花落さんが兄に回し蹴りを繰り出していた。………容赦がない…!!!! 私は思いっきり地面を踏んだ。
「……っ!?」
一瞬で、兄のところにいたはずの栗花落さんが私の前へと行き、姉の首を狙う。姉は小さくなってそれを避けた瞬間、私は彼女の横を通り過ぎて小さくなった姉を腕に抱いた。
「お姉ちゃん…頑張って…!! お兄ちゃん…!!」
まさか鬼殺隊が敵に回る日が来るとは……私はぐっと歯を食いしばる。私のこの体では戦うことはできない。それに栗花落さんに…刀を向けるなんてこともできない。だから、私はただひたすら…全力疾走をして、栗花落さんとの鬼ごっこをするのだった。