第13章 那田蜘蛛山 ~刺激臭~
「らんらんらーらん」
「う…うう…」
善逸さんは兄たちと中々会えないことと、この山への恐怖でずっと泣いていた。それでも、私の手を離すことはなく、私が声をかけるとなんとか答えてくれる。
「……ご、ごめんね幸子ちゃん…。俺…弱くって…」
鼻をすんすんと鳴らしながら、善逸さんは私にそう謝る。
「善逸さんは自分が弱いと思っているんですか?」
私がそう問いかけると、彼はこくんと頷く。
「昔からこうなんだ。すぐに弱音を吐くしすぐに逃げ出す。強くなろうと頑張っても結果出ないし……」
そういえば彼は育手の人が厳しすぎたので、逃げるように最終選別に行ったと言っていたっけ。
「大丈夫。善逸さんが優しくて強いことは私も知っていますから」
「いや、炭治郎も言ってたけどそれはないからね!!」
ブンブンと首を振る善逸さんに私は軽くデコピンをした。
「それはないと決めつけているのは自分ですよ。私も兄も善逸さんを信じています。だから、善逸さんも私たちを信じて、自分を認めてあげてください」
善逸さんはポカンっと私を見た。今までの彼を見る限り、この人は本当に自分に自信がないのだろう。自信がないから、自分の限界を低く見積もり諦める。でも……
「逃げることはいけないこととは言いません。…私は何度も逃げ続けたことがありますから。でも…逃げちゃいけない時…諦めちゃいけない時って必ずあると思うんです。その時、善逸さんがちゃんと立ち向かえるように一緒に頑張っていきましょう。私は…善逸さんや皆と…また縁側でお茶したいですから」
「……う……うん…」
私の言葉にこくんっと素直に頷く善逸さんに、私は微笑んだ。
「では、次はなんの歌にしましょうか?」