第12章 緊急の呼び出し
私はぎゅっと兄の手を握った。私もいる…という意味も込めて。すると、私の横を伊之助がずいっと前へ出た。
「俺が先に行く!!お前らはガクガク震えながら後ろをついてきな!! 腹が鳴るぜ!!!!」
「…腕が鳴るだろ…」
善逸さんの突っ込みを軽くスルーして、2人はずんずんと山へと入って行く。私は2人に叫んだ。
「糸に気をつけて!! 多分、鬼の技だから!!」
私の言葉に振り返り、兄が手を振ってくれる。……さて、と。
「た…炭治郎…幸子ちゃぁん……伊之助ぇ…置いて行くなんて…酷いじゃないかァ!!」
山へと足を向ける私たちを見て、置いていかれたと思ったのだろう。グズグズと鼻をすする。隣で彼の鎹烏…もとい雀が彼を励ましちゅんちゅんと鳴く。
「善逸さん。雀ちゃんを困らせたらダメでしょ」
「……幸子ちゃぁぁぁぁんん!!!!! 俺のために戻ってきてくれたのぉぉぉぉぉ!?!? うおぉぉぉんん!!!!!!」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔で私に飛びつく善逸さん。もう絶対に離さないぞという強い意志を感じられる。大袈裟だなぁと私がその背を撫でていると、ちゅんっとお礼を言う雀ちゃん。本当にいい子な雀ちゃんだ。
「私は山に入ります。一緒に行きましょう」
「……………うん」
私が手を差し出すとぎゅっと握り、私に抱きつくのを止める善逸さん。目を擦りながら歩く姿は、お姉ちゃんにあやされる六太を見ているようだ。私は思わずクスリと笑ってしまう。
「…怖いなら歌でも歌いながら行きますか?」
また冗談めかして彼にそう言うと、意外にもこちらもこくんと頷く。
「……幸子ちゃんって、歌が上手いよね。炭治郎は音痴なのに」
そうか。善逸さんは耳がいいんだっけ? 私はくすくすと笑いながら答えた。
「兄の子守唄は、昔から弟たちに不評でしたから」
と。