第11章 嘴平伊之助
「確かに、伊之助のあれは驚いたな」
私は縁側で兄とお茶を飲んでいた。伊之助が眠りに落ちた後、私は少し寝てしまっていた。そのため、特に眠気が襲うことなく、午後もゆるりとした時間を過ごしていた。
「そうそう。茂に似てるなぁって思ってたけど、ここまで似てると親近感がわくよね!」
茂が生まれからしばらくして、すぐに母は六太をお腹に宿した。そのため、殆ど私たちが茂の母親代わりとなっていた。しかし、最初は全然上手くいかず、母がいいと泣きじゃくったり、名前を呼んでも無視したりと大変だった。だが…
「…母ちゃんが呼んだら、すぐに泣き止むし、ご飯もひっくり返さなかったな」
「そうそう。私、お姉ちゃんと道のりは長いねって話したもん」
しかし、私たちが右往左往しているうちに…茂も少しずつ大きくなったり、私達も要領が分かってきたりして、母がいなくても大丈夫になったんだっけ? …懐かしいなぁ
「………兄ちゃんな。鬼との戦闘中に…たまにだけど…みんなの声が聞こえるんだ。それも、俺が危機に陥った時に」
兄が遠くの青い空を眺めながらそう言った。私も頷いた。
「私もあるよ。まだ片手で数えられるくらいしかないけど……きっとみんな見守ってくれてるんだなぁって思ってる」
やはり兄にもあったのか…。私はあの不思議体験が自分だけじゃなかったことを知り、嬉しくなった。
「そうか。幸子も聞こえたんだな」
兄も同じ気持ちなのか、笑みを浮かべる。私はニコッと笑った。
「お兄ちゃんにも私にもあるってことは、お姉ちゃんにもあるね!! みんな、私たちが心配で見守ってくれているんだよ!!」
あとでお姉ちゃんにも聞いてみなきゃと私が言うと、そうだなと兄がさらに笑みを見せる。
「………今日もいい天気だな」
「うん!! 雲ひとつない綺麗な空だね!!」
私が空を見上げると、兄が少し寂しそうに…
「…禰豆子にも見せてやりたいな…」
と呟いた。私は思わず彼の肩に自分の頭を乗せ、兄の手を握る。
「見れるよ絶対。また3人で見よう!!」
そう力強く兄の手を握ると、兄も私の手を握り返した。
「ああ!!」
そして強く頷くと、私の頭をそっと撫でる兄。その後、隠れていた伊之助と我妻さんが乱入してきて、私達は4人でゆったりとした…そして楽しい時間を過ごすのだった。