第6章 新しい住人-ショウトツ-
「あああの…っ、さっきのは見たかったことに…!!」
「何で?すげーカッコよかったのに」
「!!」
「どうしていきなりこんな場所で?」
「それは…その…」
恥ずかしいところを見られてしまったせいで、全身が熱い。誤魔化す理由を考えようとしたけれど、少し悩んで正直に答えることにした。
「…ほら、昨日の夜、紫鶴さん達と話してた時」
「剣道の話なんてしてないよな?」
「…そうじゃなくて、暴漢と殴り合いしたって」
「……───まさか」
「わ、私も…そういうことになるかも知れないし、何か武器とか扱えたらいいのかなと…」
「……………」
「あの…隼人?」
何かを考え込むように視線を横に逸らした隼人に私は恐る恐る声を掛ける。
そして微妙な、沈黙の後。
「あははははは!!」
「なっ!?」
「ははははは!!そうなのか、そうだったのか!いやいや、想像以上に面白いな、あんた!!」
「ま、待って!そんなに笑われるようなことした!?だって暴漢なんて相手にしたら…!」
「いやいや!笑ってない笑ってない!」
「笑ってるじゃない!」
何がそんなに隼人の笑いのツボを突いたのかは分からないが、彼は可笑しそうに声を出し、嬉しそうに笑った。
「あははは…!いい!最高!見掛けより全然骨がありそうじゃん!」
「もう!そういう言い方、失礼だよ!」
「お!」
「……あ!ごめんなさい!つい……!」
「いや、それでいいよ、その方がいいと思う」
「……え」
「少なくとも俺は、そういうあんたを好ましく思う。ただ黙って頷いてるよりはずっといい」
「……そ、それは……」
いっそ笑ってくれればと思うのに、彼の眼差しは真剣そのもので──言葉が出てこない。
「多分、みんなもね」
「……そう、かな」
私は緑の布の上の棒を凝視めた。
「立花はきっと良い家族に恵まれたんだな」
「え?」
いきなり家族の話になり、私は呆気に取られた。
「あんたを見てたら分かるよ。すごく大事に育てられて、たくさんの愛情を注がれたんだって。そういう世界にいたんだ、あんたは」
「……………」
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