第6章 新しい住人-ショウトツ-
「…干渉し過ぎたかな」
あまりこの世界には干渉しないように注意を払って生きてきたつもりだった。
それは人との距離を一定に保つのと同じで、安易に近付けば、思わぬところで反撃を受ける。彼とはまだそんなに親しくもないのに、距離を縮めたせいで嫌われてしまったのだ。
「(不快にさせてしまった…)」
裏庭なんて来なければよかった…
「(そうすれば彼もここでまだ星を見ていたかもしれないのに…)」
誰にでも苦手な人、というのはいる。口論や目立った諍いなどなくとも、反りが合わない相手もいる。
「はぁ……」
思わず溜め息が溢れた。
「(本当に私は馬鹿だな…)」
少なくとも、仕事中は普通に話せている。ただ逆に言えば、彼は仕事以外の時間は誰かと過ごすのを避けているようにも感じる。
「(『つるむのが嫌い』かぁ…。)」
朱鷺宮さんの言葉が浮かぶ。
私は夜空を見上げた。
青白い大きな星が、やけにはっきりと光って見えた。
✤ ✤ ✤
翌朝、身支度を整え、いつもの場所に向かうと今日も竹箒の音が響いていた。
けれど。
「(…掃除してるの、雉子谷さんだ…)」
彼は私を目敏く見つけ、ぺこりと頭を下げた。
「立花様!おはようございます!」
「おはようございます」
「最近ずっと快晴ですが、この調子だと今日もずっと晴れてそうですね」
「そうですね」
確か、掃除当番の札は鵜飼さんだったような…?
「…あれ?雉子谷さん?」
「おはようございます、尾崎様」
「おはようございます。…掃除当番、鵜飼君じゃありませんでしたっけ」
「そうですが、でもお坊ちゃまにそのようなことをさせるわけには参りませんので」
爽やかに答えられ、隼人の眉が微かに動く。
「でもここはお屋敷じゃないですから。朱鷺宮さんも言ってたじゃないですか、共同生活を通して成長して欲しいって」
「それは…そうなのですが…」
「鵜飼君は?」
「今し方、大学までお送りしました。本日は大事な小試験があるとのことでして」
「…寝てたら叩き起こそうと思ってたのに」
「え?何か?」
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