第6章 新しい住人-ショウトツ-
「隼人違うから。本気にしないで。私もうお風呂済ませてるし、入らないよ。というか紫鶴さん、本当にいい加減にして下さい」
「まーた紫鶴さんは立花で遊んでんの」
「遊ぶなんて酷いな。いつも言ってるじゃないか。僕は本気で彼女を口説き落としたいって」
「口説く前に本気で嫌われそうだけどな」
隼人の言葉に気にする様子もなく、紫鶴さんは笑みを浮かべて私を見ている。
「先生、話が脱却してます。そんな話はどうでもいいんです。今話してたのは滉のことでしょう」
「つれないなぁ」
「滉のことって?」
先程の滉の様子を隼人に話した。
「え?あー…そうだったんだ。でもそれ、二人のせいじゃないと思う」
「そうなの?」
「俺なんてさ、脱衣所で服脱いでた時にあいつが入ってきてさ、そのままバタンッて無言で戸を閉めて帰られたことあるよ」
「え!?」
「それは謎めいてるな…もしかして、彼は実は女性、とか?」
「(滉が女性…。)」
「その逆で、あいつが脱いでる時に入ったことあるけど間違いなく男だよ。ただまぁ、やっぱり微妙に不機嫌そうではあったな」
「もしかして誰かと一緒にお風呂に入るのが嫌なんじゃない?」
「そうなのかなーっと思ってる。
多分、潔癖症っぽいのかなって…」
「他にも何か?」
「あいつさ、すげー血が苦手なんだよ」
「血が苦手…」
また意外な感じがして、私は紫鶴さんと顔を見合わせてしまった。
「前にさ、仕事の最中にちょっと暴漢に絡まれたことがあってさ。稀モノとか関係なく、警察と間違われて因縁つけられたんだけど」
「(それは災難だな…)」
「それで殴り合いになって、俺、少し唇を切ってさ」
「(想像するだけで恐ろしい…)」
「ほんの少し血が出たんだよ、本当に少し。その時にあいつ、顔真っ青になってさ」
「…失礼だけど、あの外見からはちょっと想像出来ない反応だな」
「(確かに…意外…)」
「まぁ悪い奴じゃないしさ、人間、一つや二つ、苦手なものはあるだろうし、俺もあいつのあれはもう気にしないことにしてるんだ」
「まぁそれはそうだな」
「教えてくれて有難う、隼人」
「どういたしまして」
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